弊所では、創業者の想いをかたちにするお手伝いをさせていただいており、年間約40件程度の創業案件に関わらせていただいております。
また広島信用金庫様主催の創業スタートアップセミナーにおいてもセミナー講師を務めさせていただいております。数多くの創業案件に関わる中で、今回は創業者から特に質問が多い事項を3点お伝えします。
「この事業計画で大丈夫ですか?」
事業計画のポイントは多々ありますが、弊所の場合は過去の事案を分析し、成功する確率が高くなるポイントを3つに絞って検証することにしています。そのポイントとは次の通りです。
漠然としてわかりづらいかもしれませんが、飲食店で例えると、すごくおいしい料理を安い値段で提供すれば人気はでるかもしれませんが、原価率が高ければ手元に残る利益は少なくなります。また設備にお金をかけていれば、幅広いメニューが提供できるかもしれませんが、その元手となった融資を返済することで資金繰りは圧迫されます。オープン当初はツテなどで人は集まるかもしれませんが、常連客の確保ができなければ経営は苦しくなります。
つまり上記に掲げたことは、適正な利益で無理のない返済をして、継続的な売上を上げられれば商売は必ずうまくいくということです。
検証する中で弊所が特に注意をすることは、②の初期投資を抑えることです。
商売には失敗が付き物ですから、失敗した後のことを考えることが大切です。多額の初期投資をすると、失敗した場合にそれがそのまま負債となり、再起できる可能性を奪ってしまいます。コアとなる商品やサービスで商売の基盤を作って、その後、ニーズに応じて事業を拡大していくこと、すなわち「スモールスタート」を心掛けることをお勧めしています。
初期投資を抑えて、スモールスタート!
収支計画で一番重要なのは「売上高」を正しく予測することです。ですがこれは簡単ではありません。支出を予測することはある程度できますが、売上高を厳密に予測することは至難の業です。そこで弊所がお勧めしているのは、売上高を利益から逆算することです。
具体的には、まず創業者が月にいくらお金が必要なのかを考えてもらいます。これはサラリーマン時代の月収でもいいですし、現在必要な生活費でも構いません。そこに諸経費と原価、融資の返済資金などを加えれば、毎月必要な売上高、つまりその創業者にとっての損益分岐点売上高がわかります。あとはこの売上高を得るためにどのようにすればよいかを考えます。例えば美容院ならば、客単価がいくらで1日に何人に来店してもらえばこの売上高に達するかという考え方ができるわけです。
必要最低限の売上高を把握した後、今度は創業者の目標売上高を算定します。同じく美容院で例えると、1日平均何人のお客様を対応できるのか、土日は平日の何倍の集客を見込んでいるかなど、創業者の見込みを売上高に盛り込んでいきます。そして算定された目標売上高と必要最低限の売上高とのバランスを鑑みることで、原価や経費の整合性や事業としての実現性なども確認することができます。
月に必要なお金から逆算して、目標売上高を算定しよう!
開業するときによく質問されるのが、個人事業か法人、どちらで開業した方がよいのかということです。一般的にはある程度の所得(利益)が生じる場合には法人成りした方がよいと言われています。しかし、弊所の見解は少し違います。
法人とは法律が認めた人であり、個人とは別人格で考えられます。個人事業では稼いだお金は全て自分のものですが、法人の場合は法人のものであり、それを個人が受け取る方法は給料ぐらいしかありません。しかし、この給料には所得税と住民税の他、社会保険料がかかります。社会保険は、自己負担分の他、会社負担分も合わせると国民健康保険や年金保険に比べ、保険料率は高くなります。
したがって、法人からの個人の取り分を増やせば増やすほど出費が多くなります。そこまで踏まえると個人事業か法人かどちらが有利なのか一概に言い切れないと思います。
弊所ではこの質問にご回答をする際、お住まいのことを例にあげてご説明しています。お住まいを検討されるとき、持家か賃貸住宅のどちらがよいかという疑問があります。ただどちらがよいという明確な答えはありません。これは両者にメリット・デメリットがあり、簡単に比較ができないからです。しかし社会的に成功された方で賃貸住宅にお住まいの方はほとんどいないのではないかと思います。
これは法人でも同じで、社会的に成功されている事業で法人成りしていないケースはほとんどありません。ですから弊所では税制面での有利不利よりも、社会的信用や事業を行う上での必要性などで法人成りをご判断いただくことをお勧めしております。
また消費税のことも法人成りをするうえで大きな判断材料となります。基本的に消費税の納税義務は2年前の売上で決まります。2年前の売上高が1千万円を超える場合、消費税を納める義務が生じます。したがって、原則として開業後2年間は消費税を納める必要はありません。さらに個人事業で2年前の売上高が1千万円を超え、消費税を納める義務が生じた時点で法人成りした場合、個人から法人への消費税の納税義務は引き継がれないため、改めて法人にて納税義務を判定することになります。この場合、法人の2年前の売上高はありませんので、改めて2年間は消費税を納める義務はないことになります。したがって、個人事業から通算して4年間は消費税を納める必要はないのです。
これらのことを踏まえて弊所では、法人でなければ契約できない等のやむを得ない事情がある場合を除き、個人事業で開業し、必要に応じて法人成りすることをお勧めしております。
一部の場合を除き、個人事業→法人成りがお勧め!
弊所は今まで数多くの創業案件に関わってきましたが、感じることは資金面での不安を抱えてらっしゃる方が非常に多いということです。
創業者は資金調達に奔走するのも初めてという方がほとんどなので、必要書類を揃えるのも要領を得ず、金融機関との折衝もスムーズに進まないというケースが多く見受けられます。弊所はこれまで、このようなケースで第三者として潤滑油の役割を果たしてきました。創業者が不安に感じていることを汲み取り、それを和らげるサポートをすることが弊所の務めです。
弊所はこれからも税理士という職域に拘らず、あらゆる面でお客様をサポートできる存在でありたいと思っております。